チタン合金による真空チャンバー技術
チタン合金を真空チャンバーや真空部品の材料に用いることにより、非常にガス放出の小さい真空システムを可能にする技術を開発いたしました。これにより素早く、簡単に超高真空/極高真空を得ることが可能になりました。
この技術は山口大学を中心として関連企業を含むグループが長年の研究開発を行った成果であり、チタン合金素材、表面処理、溶接およびロー付け技術、その他の製造技術、最適設計技術、によりチタンの優れた特性を生かし、従来の常識を破る真空の応用の道を拓くものです。(2006年11月米国AVS展示会において、Exibitor Awardを受賞しました)
チタンおよびチタン合金製真空チャンバー、真空部品の利点
チタンはもともと真空への応用に適した素材です。軽量、完全非磁性、低熱膨張率、低熱容量、などなど多くの利点を有しています。我々の技術は、この本来優れたチタン材に、さらに真空応用にとって重要な特性を付け加えました。
- 表面処理技術の開発により、ガス放出をステンレスに比べ2桁ないし3桁減少させることができました。これにより、非常に高速に超高真空への排気が可能です。
- 特殊なチタン合金の開発により、ステンレスに比較して強度、硬度ともに高く、超高真空に不可欠なCFフランジが可能になりました。
- 製造技術の開発により、従来困難であったチタンの溶接やロー付けが信頼性良く可能となりました。これにより、様々な複雑形状の真空チャンバーや真空部品の製造が可能になりました。
製品例
カスタムデザインの真空チャンバー、真空部品を特注で承ります。また、チタンを利用した真空システムの製造も承ります。
・フランジ
・フィッティング
・真空チャンバー
・御社の真空機器や真空部品に使用する部品
・チタン製真空システム
チタン真空チャンバー、部品の特長
超低ガス放出
図に示すとおり、この技術によるチタンチャンバーはステンレスの1/100から1/1000の低いガス放出特性を有しています。
1年間真空チャンバーを封じきっても10-5EPaを保ちます。
超高真空への素早い排気
超高真空への排気が簡単に素早く行えます。このサンプル約10Lのチャンバーを300L/sのターボ分子ポンプで排気した時のデータです。10-8EPaの超高真空へ、わずか10時間で到達します。ベーキングも150℃、6時間で十分です。
軽量
チタンの密度はステンレスの約半分です。真空システムの重量の大幅低減が可能です。
高強度
新開発のチタン合金は、純チタンにはない強度を有し、ステンレスに比べて1.7倍の強度を持っています。これによりCFフランジの厚さが約30%薄くなり(比重が軽いので)、ステンレスの半分以下の重量となります。
軽く強い特性はトランスファーロッドなどのたわみを嫌う部品に最適です。
硬い
さらに、このチタン合金は純チタンでは不可能であったステンレス以上の高い硬度を有しますので、CFフランジのナイフエッジの加工が可能です。(純チタンでは硬度が不足であり、CFフランジは不可能でした)また、繰り返しのフランジの脱着に対してもエッジのだれはステンレスよりも少なく、超寿命で信頼性の高いCFフランジが可能となりました。
熱膨張係数が小さい
熱膨張係数がステンレスの1/2、アルミの1/3であり、温度変化による狂いを嫌う精密な機械部品への応用に適しています。
熱容量が小さい
同一の体積で比較すると熱容量がステンレスの約半分と小さいので、ベーキング開始より短時間で温度が上がり、また冷却も早いのでベーキングの時間短縮、効率化が可能です。
完全非磁性
完全に非磁性なので分析装置や強磁場内での用途に向いています。
材料の特性比較表
チタン合金 | 純チタン |
ステンレス (AlSl 304) |
アルミニウム (A5052) |
|
密度 (10 3E kg・㎥) |
4.5 | < | 7.9 | 2.7 |
硬度 (Hv) |
230-280 |
150 | 190 | 60 |
熱膨張係数 (10-6E・K-1E) |
8.4 | < | 17 | 24 |
熱伝導率 (W・m-1E・K-1E) |
17 | < | 16 | 137 |
重量あたりの熱容量 (10J・K・m-3) |
2.1 | < | 3.8 | 2.5 |
引張り強度 (MPa) |
650 | 340 | 516 | 175 |
ヤング率 (GPa) |
105 | 106 | 200 | 70 |
磁性 | 完全非磁性 | 完全非磁性 | 弱磁性 | 完全非磁性 |
その他各種チタンチャンバー、チタンニップル、チタン電流導入端子等